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中村正人コラム : 日本より上手な中国の医療観光
5月下旬、中国遼寧省にある温泉を訪ねた。その昔、「満洲三大温泉」と呼ばれた熊岳城温泉(営口)、湯崗子温泉(鞍山)、五龍背温泉(丹東)である。
戦前に日本人が開発し、当時は温泉ホテルや旅館の並ぶ行楽地だった。70年後の現在、それらの温泉はどうなっているのだろうか。
結論からいうと、当時の温泉旅館はほぼなくなっていた。だが、レジャーの時代を迎えた中国だけに温泉リゾート開発のブームに沸いていた。
大連から近い熊岳城では、アジアンリゾートさながらの高級スパホテルができていた。
北朝鮮国境の町・丹東にある五龍背でも新種の温泉施設が今春オープンしたばかりだった。両者に共通するのは、日本式露天風呂を売りにしていることだ。
これまで裸で入浴することに抵抗のあった中国の人たちが、露天風呂を最先端のスタイルとして取り入れようとしている。
だが、岩風呂ひとつとっても、見よう見真似で形だけとりつくろってみたものの、造りは荒いし、そもそも運用のノウハウが身についていない。
本気でやるつもりなら、日本の温泉コンサルにでも相談すればいいのに、そこまでの発想はないようである。
面白かったのは、湯崗子温泉だ。ここには、ラストエンペラー溥儀を満州国皇帝にするべく、この地に逗留した彼のために関東軍がこしらえた超高級温泉浴室
(「龍池」という)が残っていた。その豪華さは比類のないものだった。さらに面白かったのは、ロシア人相手の医療観光で成功していたことだ。
日本留学経験もある湯崗子温泉K主任によると、年間 5000 人のロシア人がこの地を訪れる。
彼らは最低1週間から長くて1ヵ月、湯治とレジャーを兼ねて滞在する。
「日本人も呼びたいけど、いまの中国のサービスレベルでは無理。だから、そこそこのサービスで問題ないロシア人を呼ぶことにした」。
主任自らハバロフスクやウラジオストックなど極東ロシア各地を訪ね、医療観光の誘致に奔走した。
この話は医療観光の成功の鍵について示唆を与えてくれる。自らのサービスレベルや弱点を自覚したうえで、顧客を誰にするか絞り込むこと。
いまの日本の医療観光ブーム、中国人富裕層がターゲットだというけれど、どこまで彼らの求めるニーズとこちらの提供できるサービスとがマッチしているといえるのだろうか。

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著者紹介:中村正人
中国レジャー研究家。経済成長著しい中国の国内外におけるレジャー動向やトレンドをウォッチングしている。
『中国人から儲ける本』(宝島社)『産業と会社研究シリーズ トラベル・航空』『ホテル』(産学社)など著書多数。
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